抄録
エンハンサートラップ法を用いて、シロイヌナズナの前形成層や維管束で発現する遺伝子を同定し、それら遺伝子の機能を逆遺伝学的に解析することを進めている。GFPをレポーター遺伝子とし、pBluescript IIを含む、エンハンサートラップT-DNAコンストラクトを構築した。レポーターにGFPを用いているので、T1形質転換体で発生段階を追って発現パターンの観察を行い、エンハンサートラップ系統を選抜することができる。また、T-DNAにpBluescript IIを含んでいるので、T-DNA挿入ゲノムDNAを、プラスミドレスキュー法を用いて単離することも可能になる。これまでに、約20,000のT1形質転換体から、実体蛍光顕微鏡下でGFP蛍光が観察される562個体を選抜し、その中から、前形成層や維管束で蛍光が観察されるものを346個体見いだした。これらは、前形成層と維管束で蛍光が観察された組織別に、本葉105個体、根209個体(特に根端の前形成層では10個体)、地上部及び根16個体、本葉以外の地上部16個体に分類された。現在、T1形質転換体のスクリーニングと並行して、T2世代を用いてGFPの蛍光パターンを詳細に観察すると共に、挿入T-DNAに隣接するゲノムDNAの塩基配列を決定し、挿入部位近傍の遺伝子を同定している。