抄録
Upstream ORF(uORF)の中には下流の ORFの 翻訳を抑制する例がいくつか知られている。この過程でリボソームは uORF の翻訳終了後に一旦解離し、下流の ORF の開始コドンで翻訳を再開始すると考えられている。私たちはこれまでに翻訳の再開始に関与する L24 リボソーム蛋白質遺伝子の1つが欠損したシロイヌナズナ突然変異体を単離し、この突然変異体では雌ずいのパターン形成に異常が観察されることを報告した(2001、2002本大会)。一方よく似た雌ずいの表現型を示す突然変異体として ett と mp が知られており、これらの原因遺伝子も uORF を持っていた。このことから ETT と MP の uORF はリボソームにより翻訳されることで下流 ORF の発現を抑制的に制御しており、L24 突然変異体ではその過程で翻訳の再開始が効率よく行われないため、雌ずいのパターン形成が異常になるという仮説をたてた。この可能性を検証するために、uORF を含む 5′UTR と、点突然変異により uORF を無くした 5′UTR をそれぞれレポーター遺伝子につないだ融合遺伝子を作製し、葉肉細胞プロトプラストで一過的に発現させてレポーター活性を測定した。その結果 uORF を含む融合遺伝子を導入した場合、uORF を含まないものに比べてレポーター活性の減少が認められた。このことから、ETT と MP の uORF は下流 ORF の発現を抑制していることが示された。