抄録
我々は、タバコを材料にして、ミトコンドリアゲノムの構造、その複製と継承、遺伝子発現調節等を調べ、“エネルギー・物質変換装置”としての植物ミトコンドリアの成り立ちを解析している。今回は、RNA編集について解析した結果を報告する。
高等植物ミトコンドリアでは転写後にRNA編集(主としてC→U脱アミノ化反応)が数百個所で起こることが知られている。我々はタバコミトコンドリアのゲノムDNA塩基配列を基にプライマーを合成し、RT-PCR法で転写後に起きたRNA編集部位を決定した。現在までに、31種類のタンパク質で凡そ400箇所のRNA編集部位を見出した。そして、それぞれの遺伝子ごとに、タバコ、シロイヌナズナ、イネにおけるRNA編集部位の数を比較した。そして、他の植物の配列情報と共にマルチプルアラインメントし、そこにRNA編集部位をマークした。その結果、(1)RNA編集部位の情報を加えて初めてタバコミトコンドリア遺伝子産物のアミノ酸配列を他の植物と比較できるようになった。(2)RNA編集によってrps10遺伝子の開始コドンが生じることが確認できた。しかしながら、cox1の開始コドンは生まれず、別のコドンから翻訳が始まると推定した。
現在ミトコンドリアのRNA編集部位の特徴を見出す作業を行っている。少なくとも、編集部位(C)の1塩基上流にはUが多いことが明らかになった。