日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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紅藻スサビノリPorphyra yezoensisの細胞膜におけるP型ATPaseの検出とその胞子体特異的発現
*長谷 昭田畑 恵北出 幸広嵯峨 直恆
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p. 588

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抄録
 紅藻スサビノリPorphyra yezoensisは、巨視的な葉状体(配偶体)と微視的な糸状体(胞子体)からなる異形の世代交代を営む生物である。これら両世代の藻体から、分画遠心と二相分配法により細胞膜に富む画分を得た。これらの画分のバナジン酸感受性ATPase活性を調べたところ、最大活性に50 mM以上のNaClを要求し、最適pHが8.5付近にあることより、Na+-ATPaseである可能性が示唆された。この活性は糸状体で極めて高く、葉状体の2~10倍以上の値を示した。P型ATPaseに共通して保存されているATP結合部位の配列に対する特異的抗体を用いての免疫ブロット分析により、この抗体に反応する115 kDaタンパク質の糸状体における著しい蓄積を確認した。一方、スサビノリEST 解析情報データベースに対する、P型ATPaseに共通する保存配列のホモロジー検索により、糸状体に豊富な多数のESTクローンを抽出した。これらのクローンの塩基配列の結合・整列によって、アミノ酸数1144、推定分子量125851の連続したアミノ酸配列を得た。この配列中のモチーフ検索、ラフィド藻Heterosigma akashiwoのNa+-ATPase及び紅藻イデユコゴメCyanidium caldariumのH+-ATPaseのアミノ酸配列との比較などにより、この配列がスサビノリにおけるNa+-ATPaseの全長配列であると推定した。
 以上の結果は、スサビノリにおいては、少なくとも胞子体世代の細胞膜primary pumpが、Na+-ATPaseであることを示している。
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© 2004 日本植物生理学会
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