抄録
ホスホリパーゼA2(PLA2)はリン脂質のsn-2位のエステル結合に作用して脂肪酸とリゾリン脂質を生成する脂質加水分解酵素である。植物のPLA2は、動物と同様に構造的に類似した遺伝子ファミリーを形成し、分泌型PLA2(sPLA2)、パタチン様PLA2からなっている。また動物のプロスタグランジン生合成系は植物のジャスモン酸生合成系に類似するが、この初発酵素である細胞質型PLA2は植物では報告されてない。植物のPLA2は、脂質の分解、細胞膜の修復、病害・傷害に対する防御応答、さらには情報伝達といった様々な細胞内プロセスに関わっていることが示されてきた。本研究では、シロイヌナズナsPLA2遺伝子のジャスモン酸応答性と細胞内局在性を解析した。その結果、シロイヌナズナ培養細胞T87におけるsPLA2遺伝子は、ジャスモン酸応答性遺伝子であるvegetative storage proteinと同様に、メチルジャスモン酸処理により遺伝子発現が誘導された。またシロイヌナズナの4種あるsPLA2のうちsPLA2αについて、タマネギ表皮細胞を用いて細胞内局在性を調べた結果、sPLA2α-GFPは主に細胞間領域に局在することが示された。従ってシロイヌナズナsPLA2αの作用機序としては、ジャスモン酸に応答して細胞外に分泌され、標的細胞に作用してリン脂質を分解することが示唆された。