日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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Translationally Controlled Tumor Protein相同タンパク質へのグルタチオンの結合
*伊藤 寿岩渕 雅樹小川 健一
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p. 628

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抄録
グルタチオンは細胞内にもっとも多量に存在するチオール化合物であり、様々な環境要因によってその酸化還元状態は変化する。植物が環境変化に適応するとき、細胞内の酸化還元状態を認識すると考えられる。酸化還元状態の変化による特定のタンパク質へグルタチオンの結合や解離、およびその結果によるタンパク質の機能変化を通じて、細胞は酸化還元状態の変化を認識すると我々は考えた。そこで、アラビドプシスの培養細胞へビオチン標識したグルタチオンを取り込ませることにより、グルタチオンが結合するタンパク質を精製した[Ito et al. (2003) Plant Cell Physiol. 44: 655]。アミノ末端のアミノ酸配列分析から、その一つはTranslationally Controlled Tumor Protein (TCTP)と相同なものであることが明らかとなった。TCTPは動物の腫瘍細胞に 多量に蓄積するタンパク質として同定されたものであり、その機能の詳細は不明だが 、細胞分裂にかかわっていると考えられている。TCTPへのグルタチオンの結合を確認するために、アラビドプシスのTCTPを大腸菌で発現し、酸化型グルタチオンをin vitroで処理したところ、TCTPへグルタチオンが結合することが分子量の増加より確認された。現在このタンパク質の機能解析を進めている。
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© 2004 日本植物生理学会
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