日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ラン藻Plectonema boryanumにおける環境の酸素濃度変化にともなう2つのプロトクロロフィリド還元酵素系の機能分業
*山崎 将司藤田 祐一
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p. 657

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抄録
酸素発生型光合成生物の多くは、クロロフィル(Chl)の生合成の後期過程で2つのプロトクロロフィリド(Pchlide)還元酵素、光依存型酵素(LPOR)と光非依存型酵素(DPOR)、を用いてChlを合成している。本研究では、2つのPchlide還元酵素を併存する光合成生物における両酵素の機能分業を検討するために、ラン藻Plectonema boryanumを材料として、DPORとLPORの欠損株の形質を詳細に検討した。両欠損株を強光下で種々のO2濃度のN2ガスを通気して生育を検討した結果、DPOR欠損株はいずれの条件でも野生株と同様に生育したが、LPOR欠損株は3%以上のO2濃度では生育できなかった。この結果は、2つのPchlide還元酵素のうちDPORが酸素感受性酵素であることを間接的に示している。DPORの3つのサブユニットとLPOR蛋白質含量をウェスタン解析で検討した結果、DPORサブユニットのChlLとChlN含量が著しく増加していた。嫌気的条件下でのLPOR欠損株の生育は、嫌気条件によるDPORの酸素失活防御だけでなく、ChlLとChlNサブユニットの含量を増加させることで活性を維持することにより可能となっていると推察される。また、Pchlide含量が野生株の4-6倍に上昇していたことから、PchlideのchlL-chlNオペロンの発現誘導への関与についても検討中である。
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© 2004 日本植物生理学会
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