抄録
Rhodovulum sulfidophilumは、反応中心結合チトクロムが3ヘムであり、一般の4ヘムとは大きく異なる特徴を持つ。欠失しているヘムは、4ヘム型チトクロムでは可溶性電子伝達体からの電子受容部位であり、電子受容機構が異なることが予想される。本研究では、その電子伝達体について調べた。
Rdv. sulfidophilumのスフェトプラストから可溶性タンパクのない膜標品を調製し、閃光照射実験を行ったところ、反応中心結合チトクロムの再還元が観察された。このことから、この菌には膜結合性電子伝達体が存在し、チトクロムbc1複合体から反応中心結合チトクロムへの主要な電子伝達体として機能していると考えられた。
低濃度のオクチルチオグルコシド(30mM)で膜を処理したところ、分子量100kDa程度の膜結合性チトクロムcが新たに得られ、再構成実験の結果、この膜結合性チトクロムcによる反応中心結合チトクロムの再還元が見られた。すなわち、このタンパクが先に示した反応中心への膜結合性電子伝達体の候補であると考えられる。
これまで、このような膜結合性電子伝達体は、反応中心結合チトクロムを持たない紅色細菌でのみ観察されていたが、本研究により反応中心結合チトクロムを持つ菌にも存在することが示唆された。