抄録
ヘリオバクテリアの光化学反応中心は、シアノバクテリアや高等植物の系I型反応中心と同じFe-Sタイプである。この光合成細菌はグラム陽性であり、集光性タンパクやアンテナ色素会合体をもたない。反応中心コアタンパクはホモダイマー構造と推測されている。我々は昨年の本大会では、好熱性のHeliobacterium modesticaldumから調製した膜標品を用いて、センターX(FX)に由来するシグナルを初めて観測したことを報告した。また安定なコアタンパク標品を単離し、膜標品との分光特性の比較を詳細に行った。今回は、異なる可溶化方法により得た粗精製標品の閃光照射実験とESRによる測定を行ったので報告する。室温293Kで粗精製標品を閃光照射すると、P798+はt1/2 = 30 msで再還元され、この値は膜標品での電荷再結合の値と同じであった。また低温77Kではt1/2 = 2 msの成分のみ観測され、これはFXとの電荷再結合に由来する。昨年、コア標品の室温での電荷再結合はt1/2 = 20 msであることを報告した。したがって粗精製標品には、末端電子受容体であるFA/FBタンパクの存在が強く示唆された。実際、ESR測定を行ったところ、14Kで光照射によりFBシグナルが観測された。さらに230Kから14Kに冷やしながら光照射を行うことによりFA/FBのinteraction formのシグナルが観測された。これらFA、FBのシグナルはすでに膜標品で報告されていたが、可溶化標品で報告された例は初めてである。