抄録
イネ種子胚乳組織は、胚乳母細胞を起源としてデンプン性胚乳細胞とアリューロン細胞に分化し、その後それぞれの組織で急速に貯蔵物質の合成・集積を伴い種子形成が進行する。しかし、胚乳形成の分子機構については不明な点が多い。本研究ではイネ胚乳組織の特定細胞を限定分離し、貯蔵物質合成に関わる遺伝子の発現をミクロレベルで解析することを目的とした。
これまでの組織・器官レベルの解析では組織分画に限界があり、細胞レベルの精度を求めることはできなかった。動物組織ではLCM法を用いて標的細胞を正確に切断し回収することが可能になったが、植物組織は細胞壁を含むため困難であった。そこで、植物種子細胞に適したLCM法を開発し、胚乳形成期の特定細胞で発現している遺伝子の解析を行った。登熟過程の種子を固定・包埋し、10 µmの厚さに薄切した後LCMにて内胚乳組織を外周部と中心部に分けて回収した。RT-PCR法によりmRNAを検出したところ貯蔵タンパク質であるプロラミンは外周部で発現量が多いという結果を得た。また、貯蔵器官に関連する遺伝子としてグルテリンや液胞プロセッシング酵素の発現も解析したので合わせて報告する。