抄録
高等植物の体細胞では非相同組換え活性に対して相同組換え活性は低いことが知られている。一方、減数分裂期相同組換え頻度は比較的高く、その組換え機構の解析により、相同組換え能向上の手がかりが得られると期待される。減数分裂期組換え酵素Dmc1は真核生物で広く保存され、相同染色体間組換え反応に中心的役割を果たす。我々はイネに存在する2種類のDMC1ホモログ(完全長cDNA:OsDMC1AとOsDMC1B)を単離し、それらのcDNAを導入したトランスジェニックイネを作出、解析し、以下のような知見を得た。1)OsDMC1アンチセンス・イネでは花粉稔性の著しい低下が生じたことから、DMC1遺伝子発現がイネ配偶子形成に必須であることを見出した。2)トランスポゾンTos17挿入によるイネdmc1変異系統の解析の結果、DMC1AまたはBの単独変異では稔性に影響は見られなかったことから、両遺伝子は構造的のみならず、機能的にも類似した重複遺伝子である。3)DMC1::GFP融合遺伝子導入イネの体細胞ではGFP蛍光が染色体に強く局在することが観察された。従って、Dmc1が体細胞でも機能し得ることが示唆された。4)DMC1遺伝子の過剰発現は、相同組換え活性検定用改変GUS遺伝子導入イネの組換え効率の増減には寄与しないことが判明した。