抄録
青色光は孔辺細胞細胞膜H+-ATPaseを活性化して気孔開口を引き起こす。最近、私達は気孔開口の青色光受容体がフォトトロピンであることをシロイヌナズナのフォトトロピン変異体を用いて明らかにした。しかしながら、シロイヌナズナの孔辺細胞プロトプラスト(AtGCPs)を用いた青色光反応の解析は行なわれていない。本研究ではAtGCPsにおける細胞膜H+-ATPaseの活性化について調べた。まず、AtGCPsにおいて青色光(100 μmol/m2/s、30秒)によるH+放出反応を調べたところ、青色光照射開始から2分で最大となり6分程度持続した。次に、細胞膜H+-ATPase活性を調べると、青色光によりATP加水分解活性が増加していた。さらに、Far Western解析を行ったところ、青色光に依存して細胞膜H+-ATPaseへの14-3-3蛋白質の結合が認められ、細胞膜H+-ATPaseは青色光によりリン酸化され、そのリン酸化部位への14-3-3蛋白質の結合により活性化されることが推測された。一方、phot1 phot2二重変異体においては、青色光に誘導されるH+放出、細胞膜H+-ATPaseの活性化、14-3-3蛋白質のH+-ATPaseへの結合のいずれもが見られなかった。以上の結果は、AtGCPsにおける細胞膜H+-ATPaseの活性化には青色光受容体としてフォトトロピンが関与することを確証するものである。さらに、AtGCPsに発現する細胞膜H+-ATPaseアイソフォーム(AHA1-AHA11)を調べる目的でRT-PCRを行ったところ、全てのアイソフォームが発現していた。