日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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アラビドプシスPSK受容体の解析
*松林 嘉克小川 真理坂神 洋次
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p. 789

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抄録
PSKは植物細胞の培養液中に存在する分泌型ペプチドであり,細胞の増殖や分化を促進する活性を示すが,植物個体レベルでの本質的機能については未知の部分が多い.PSK受容体(PSKR1)はすでにニンジン培養細胞の膜画分から精製・クローニングされ,LRR-RLKであることが明らかとなっているが,アラビドプシスにはそのホモログが3種類(AtPSKR1, AtPSKR2, AtPSKR3)見出される.最もPSKR1と相同性の高いAtPSKR1をアラビドプシスで過剰発現させたところ,カルス由来の膜画分ではAtPSKR1発現量の増加にともない顕著なPSK結合活性の上昇が見られた.しかしながら,植物体では何らかの転写後調節が行なわれており,AtPSKR1はほとんど増加しなかった.AtPSKR1のノックアウト株は,in vitroではWTと同等の生育を示したが,自然環境下では葉が枯れやすく生育が抑制された.また,リーフディスクからのカルス形成がやや抑制された.植物が自然環境下で生育するためには,外界からの様々なストレスによってダメージを受けた組織を常に修復していく必要があり,局所的な細胞の脱分化・増殖・再分化が繰り返されているものと考えられるが,このような局面にPSKが関与している可能性が示唆された.現在,AtPSKR2, AtPSKR3についても解析を行なっている.
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© 2004 日本植物生理学会
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