日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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自家不和合性における自他識別の分子機構
*高山 誠司磯貝 彰
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p. S020

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抄録
生殖過程においては、適切な交配相手を選択するために、花粉(管)と雌ずい間で、様々な細胞間認識が行われている。自家不和合性は、こうした雌雄間認識機構の一つであり、これによって植物は自己の花粉を識別し、その発芽・伸長を特異的に阻害することで自殖(近親交配)を回避している。この自他識別反応は、多くの植物種において、1遺伝子座(S遺伝子座)上のS複対立遺伝子(S1, S2, ---, Sn)を想定することにより遺伝学的に説明されてきた。すなわち花粉と雌ずいが同じS遺伝子を発現する場合に不和合性反応が起きる。このことは、S遺伝子毎に構造の異なる(多型を示す)花粉因子と雌ずい因子がS遺伝子座上にコードされていると想定し、両者の相互作用を介して自他識別が行われていると仮定すると説明できる。実際、複数の植物種において花粉因子・雌ずい因子の探索が行われ、それらの実体が明らかにされてきつつあるが、これまでに同定された因子類の分子性状は、植物種間で全く異なっている。このことは、それぞれの植物種が、進化の過程で独自の自他識別機構を獲得してきたことを示唆している。アブラナ科植物およびバラ科・ナス科植物を中心に、自家不和合性の分子機構解明の現状について紹介する。
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© 2004 日本植物生理学会
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