日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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半数体タバコ変異体作出系を用いた細胞接着機構の解明
*岩井 宏暁石井 忠酒井 愼吾佐藤 忍
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p. S021

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抄録
高等植物の形態形成において、分化した細胞同士の接着が重要である。しかし、その主役であるペクチンの生合成メカニズムや発現特性に関する知見は極めて乏しい。近年我々は、Nicotiana plumbaginifoliaの半数体植物の葉切片にT-DNAを挿入して培養し、不定芽形成能力を失うと同時に、細胞接着性の弱くなった突然変異体nolac (non-organogenic callus with loosely attached cells) の作出法を確立した。この系では、シロイヌナズナでは作出が困難な胚性致死の細胞接着変異体をカルスとして維持し、変異体の生化学的解析を行うことが可能である。nolac-H18 の解析より、新規ペクチングルクロン酸転移酵素遺伝子(NpGUT1; glucuronyltransferase 1)が同定された。この遺伝子は、植物のペクチン合成に関わる初めての糖転移酵素遺伝子で、頂端分裂組織で特に発現が強く、メリステム形成と共にホウ素の作用点であるラムノガラクツロナンII二量体の形成に必須であることが判明している(PNAS, 2002)。また、生殖器官の詳細な発現解析を行ったところ、タペート組織、花粉、花粉管の先端、花柱の伝達組織において発現が見られた。以上の結果よりNpGUT1は、分裂組織における細胞接着に重要であるだけでなく、花粉管ガイダンスにも重要である可能性が示唆された。本講演では、高等植物の細胞接着にかかわるペクチンの生合成が時空間的にどのように制御され、どのような役割を持つかについて考察する。
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© 2004 日本植物生理学会
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