抄録
近年、X線結晶解析により、光化学系II蛋白質複合体の三次元構造が次第に明らかとなってきた。しかしながら、系IIが行う種々の電子・プロトン移動反応のメカニズムの解明のためには、各色素・金属コファクターの結合部位における、水素結合状態やプロトン化構造などの、X線構造解析では得るのが困難な、より詳細な構造情報が必須である。フーリエ変換赤外分光法(FTIR)は、そうした、蛋白質の活性部位における、詳細な構造や分子相互作用を調べるのに適した手法であり、蛋白質中の分子の大雑把な位置関係が明らかになった後に、その真価を発揮できるといえる。また、FTIRは、酸素発生系における各S状態遷移やコファクターのラジカル生成反応をモニターし、その際のコファクター及び近傍蛋白質の構造変化を検出することにより、反応の分子機構を明らかにするために有効である。本講演では、FTIRによる光化学系IIの構造と反応の研究について、最近の結果を紹介する。