抄録
好熱性らん藻由来光化学系II膜蛋白質複合体(PSII)の結晶化の成功により、PSIIの立体構造は原子分解能に近いレベルで明らかにされつつある。X線結晶解析より得られた構造から、PSIIの機能について何がわかったのだろうか?本講演では、X線結晶構造を基に新たに解明されたPSIIの機能について、演者らが行っている構造解析の最近の結果と他のグループが報告した結果を比較しながら議論したい。特にPSII反応中心クロロフィルの配置から、従来言われていたような反応中心4量体モデル、あるいは多量体モデルが、中心に位置する2量体のクロロフィル間の距離が明らかにより近いことから正しくないことが示された。しかし、PSII反応中心の2量体クロロフィル間の距離が好色硫黄細菌やPSI反応中心より長いことから、その間の相互作用がより弱いものであることも明らかになった。また、表在性タンパク質のうち、33 kDaタンパク質の構造がOmpファミリータンパク質と相同する点があることから、該当タンパク質が低分子量物質を輸送する機能を持つ可能性があることが示唆された。さらにMnクラスターの構造的特徴とその配位環境について報告する予定である。そしてこれまでの結果を基にPSII構造解析・機能解析の将来について展望したい。