日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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反応を制御する表在性蛋白質:配置と機能
「化学的、生化学的解析から探る」
*榎並 勲
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p. S051

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抄録
 酸素発生光化学系II(PSII)は数多くの膜内在性蛋白と数種の表在性蛋白からなる。膜内在性蛋白は植物種を越えて保存されているが、表在性蛋白は植物種により異なる。表在性33 kDa蛋白は共通に存在するが、他の表在性蛋白は異なる。高等植物や緑藻には23 kDaと17 kDa蛋白が結合しているが、紅藻やラン色細菌にはこれらの蛋白は結合してなく、その代わりに12 kDa蛋白とcyt c550が存在する。紅藻にはさらに新規な20 kDa蛋白が結合している。また、各表在性蛋白の再構成実験の結果から、表在性蛋白の結合様式が植物種により異なることも明らかになっている。本講演では、主として表在性蛋白の分布と結合様式の違いから酸素発生系の進化について議論する。高等植物、紅藻、ラン色細菌の各表在性蛋白の抗体を作成し、それらの抗体との反応から表在性蛋白の分布を種々の植物種で調べた。その結果、緑藻、ユーグレナ藻、クリプト藻は高等植物型の表在性蛋白を有し、紅藻が2次共生した褐藻、珪藻、ハプト藻は紅藻型の表在性蛋白が存在することが明らかになった。また、紅藻に存在する新規な20 kDa蛋白のアミノ酸配列は緑藻の表在性17 kDa蛋白に有為な相同性がみられ、psbQ familyの一員であることが判明した。これらの結果と結合様式の植物種間の違いから酸素発生系の進化について議論する予定である。
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© 2004 日本植物生理学会
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