日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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反応を制御する表在性蛋白質:配置と機能 ―X線構造解析が示す構造―
*伊福 健太郎中津 亨加藤 博章佐藤 文彦
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p. S052

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抄録
 近年の構造生物学の発展を背景に光化学系2複合体の立体構造の解明が進み、それに伴って表在性蛋白質に関しても知見が集積しつつある。表在性蛋白質のサブユニット構成は、ラン藻と高等植物・緑藻との間で異なるが、それらの中でも関連する立体構造の情報が全くないのは、高等植物・緑藻に特徴的に存在するPsbPサブユニット(別名:OEC23)を残すのみとなっている。
 PsbPは水分解反応の補欠因子であるカルシウムと塩素イオンを、反応中心近傍へ局在させるのに必要な蛋白質である。また高等植物、ラン藻にはPsbPと弱い相同性を示すパラログやオーソログ(PsbPドメイン蛋白質)が存在しているが、それらの分子機能は全く未知である。よってPsbPの立体構造は、PsbPによるイオン保持の分子機構のみならず、他のPsbPドメイン蛋白質の機能やPsbP自身の分子進化を考える上でも重要である。最近、我々はタバコのPsbPを材料に、その結晶化と立体構造の決定に1.6 Åの分解能で成功した。β-シートを基本とするPsbPの立体構造に類似した構造を示す蛋白質はラン藻の光化学系2複合体構造中には存在せず、高等植物が進化の過程で新奇な構造をもつ蛋白質を表在性蛋白質として獲得した事を示唆していた。本シンポジウムでは、このPsbPのX線構造解析から得られる情報に基づいて推定される機能についても紹介する。
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© 2004 日本植物生理学会
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