日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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短日植物と長日植物の光周性花芽形成分子機構の違い -イネとシロイヌナズナをモデルに-
中川 仁土井 一行吉村 淳矢野 昌裕*井澤 毅
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p. S075

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抄録
我々は、短日植物イネを材料に用いて光周性花芽形成の分子機構を解析し、長日植物シロイヌナズナの花芽形成分子機構といろいろな側面から比較することで、高等植物が持つ花芽形成機構の多様性を理解しようと考えている。これまでに、進化的に保存された花芽形成経路、すなわち、概日時計 - CO転写因子 - FT花芽誘導因子からなる経路の後半がイネとシロイヌナズナで異なっていることを明らかにし、イネの日長認識機構の分子モデルを提唱している。本発表では、COやそのイネオーソログであるHd1のFT(およびイネオーソログHd3a)プロモーター転写制御のメカニズムを一過性発現解析系を用いて解析した結果を発表する。また、最近になって、QTL解析により同定されたイネの開花を制御する遺伝子Ehd1を単離した。Ehd1遺伝子はBタイプのレスポンスレギュレーターをコードしており、Hd3a等を転写制御すること、また、Ehd1の過剰発現により、イネの開花を促進できること、さらに、シロイヌナズナにオーソログと考えられる遺伝子がゲノム情報に存在しないことを明らかとした。これらの結果は、イネに特異的な光周性花芽形成経路が存在し、FT相同遺伝子の転写制御の段階で花芽形成信号が統合されていることを示唆している。今回、Ehd1経路を組み込んだ短日植物イネ花芽形成の制御を長日植物シロイヌナズナの分子機構と比較し、植物が持つ花芽形成機構の多様性に関して議論する。
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© 2004 日本植物生理学会
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