抄録
1974年にAnabaena cylindricaを用いた光水素生産が報告されて以降、シアノバクテリアを用いた水素生産研究には、Anabaena、Calothrix、Nostoc、Scytonema、Synechococcus (Cyanothece)など様々な窒素固定株が用いられている。これら窒素固定株は細胞形態の上、単細胞、ヘテロシストをもたない糸状細胞体、ヘテロシストをもつ糸状細胞体に大別可能で、それぞれの細胞形態ごとに異なった水素生産方式をとっているものと考えられている。一方、近年シアノバクテリアのSSUrDNA配列情報が加速度的に蓄積され、各株の分子系統位置を解析することが容易になっている。そこで我々は、保存株の水素生産能を測定し、同時にSSUrDNAを用いた分子系統解析をおこなって、水素生産能の高低と分子系統上の位置との関係について検討した。その結果、シアノバクテリアの水素生産能の高低が、ある程度系統位置を反映しており遺伝的に決定されている可能性が示唆された。
シアノバクテリアを用いた光水素生産システムの今後の開発には、高い水素生産能力をもつ株の更なる探索と、バイオテクノロジーを駆使して遺伝的に高いポテンシャルをもった株をさらに改良・育種してゆくことが重要であると考えられる。これら探索や遺伝子改変のモデル生物の選定にあたって、分子系統位置情報がどのように活用できるのか議論してみたい。