抄録
葉緑体のゲノム上には約100程度の遺伝子がコードされているが、葉緑体自体を構成するタンパク質の大部分は核ゲノムにコードされており、核コードの約3500の葉緑体タンパク質には機能がわかっていないものがたくさんある。我々のグループが作製した16000タグラインを用いて、葉緑体形成や光合成に関与する遺伝子の解析を2つの側面から試みている。
1つは、葉緑体形成に必要不可欠なものを網羅的に調べるために、タグラインよりアルビノのようなシビアな表現型を示す変異体をスクリーニングし、その原因遺伝子の同定、及び機能解析を行う。現在、38ラインのアルビノ又はpale green変異体を単離し、原因遺伝子の多くが葉緑体タンパク質をコードすると予測された。機能予想される原因遺伝子の中には、光合成に関与するもの以外に、翻訳や蛋白質のトランスロケーターなど、多くの葉緑体蛋白質に関与する遺伝子が多いことを明らかにした。
2つ目は、野生型と変わらない表現型を示すが微妙に光合成系に異常が見られる変異体のスクリーニングを行い、その原因遺伝子の同定を行っている。クロロフィル蛍光2次元画像解析システムを用いて、葉緑体タンパク質の遺伝子破壊株(約100ライン)をスクリーニングし、クロロフィル蛍光の時間変化が野生型と異なる変異体を得、その原因遺伝子がLycopene epsilon cyclaseであることを明らかにした。