日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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低波数赤外分光法による光合成酸素発生反応中間体の検出:水の同位体置換の効果
*木村 行宏山成 敏広石井 麻子小野 高明
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p. 010

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抄録

光合成酸素発生複合体の触媒中心である光化学系IIマンガン(Mn)クラスターは、S0からS4の5つの酸素発生反応中間状態(S状態)を経て2分子の水を1分子の酸素に変換することが知られているが、その詳細な反応機構は明らかにされていない。低波数(1000-370 cm-1)赤外分光法はMnに配位する基質水分子由来の化学種の振動モードを直接検出することが可能であり、水の酸化反応機構を解明する上で非常に有力な手法である。本研究では好熱性ラン藻Thermosynechococcus elongatus光化学系IIコア標品のS状態間遷移に対応する低波数赤外吸収差スペクトルを測定し、各S状態間赤外吸収差スペクトルに対するH218O、D216O、D218O置換の効果について調べた。H216O、H218O、D216O、D218O置換試料のS状態間赤外吸収差スペクトルの詳細な比較から、S2/S1、S3/S2、S0/S3、S1/S0遷移に伴って変化する16O/18O交換でのみ変化するバンド、及びH/D交換でのみ変化するバンドが観測された。前者は主にMnクラスターの骨格振動、後者はアミノ酸残基やタンパク質に由来するモードであることが示唆された。さらに、16O/18O及びH/D交換で変化するバンドは光合成酸素発生反応に密接に関与したMnと基質水分子の相互作用に由来するモードであることが示唆された。

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© 2005 日本植物生理学会
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