抄録
モモは、殺菌剤のボルドー液に含まれる銅に対して敏感に反応し、葉に穿孔が生じることが古くから知られている。一方、モモの重要病害である穿孔細菌病に罹病した葉には類似した病班が見られることから、銅による穿孔現象と耐病性機構との関連性について研究をおこなった。最初に、銅濃度と障害面積の関係を調べるために、CuSO4をモモの葉に処理した。200μMでは外見上変化は見られなかったが、300μMより濃い濃度では穿孔が形成され、その面積は濃度によらず、ほぼ一定であった。次に、PCD(Programmed Cell Death)との関連を調べるために、PCDの実行因子であるカスペース活性の阻害実験を行った。500μM 銅をカスペース1阻害剤と一緒に葉に塗布したところ、銅のみで観察された病班の発生がとほとんど観察されなかった。さらに、耐病性機構を担っているファイトアレキシン合成に関与するPAL 、防御応答関連たんぱく質であるPGIP,β-1-3glucanase,Chitinase,PR-4ならびに酸化ストレスで誘導されるSODについて発現解析を行った。その結果、β-1,3-glucanaseと Chitinaseの発現量の増加が認められた。以上のことから、銅処理によって見られるモモの葉の病班の形成には、過敏感細胞死が関与することが示唆された。