抄録
本研究では次世代型アクチベーションタギング法を構築するため以下の2点の特徴を導入した新システムを作製した。1、遺伝子破壊型タギングのように1つのタグの導入に対して1遺伝子が候補遺伝子として対応する。2、シロイヌナズナ以外の有用生物の遺伝子機能解析にも利用できる。これらの目的のもと、約1万種の独立シロイヌナズナ完全長cDNAからなる標準化cDNA発現ライブラリーをアグロバクテリア内で作成した後、このライブラリーをシロイヌナズナに花感染させ約15,000ラインの独立した形質転換植物を作成した。現在形態形成や色素合成などの表現型が現れたラインを単離し表現形データベースを作成している。この手法を用いた基礎研究への応用の1例として、オーキシン合成遺伝子の強発現形質転換体と類似の表現形を持つ20ラインを単離した。これら20ラインから、導入されたDNA断片をレスキューしたところ、16ラインからはインターナルコントロールとして導入したバクテリア型オーキシン合成遺伝子が増幅されたが、4ラインからはそれぞれ別々の大きさを持つcDNA断片が増幅された。この4遺伝子を再び野生型植物に再導入したところいずれもオリジナルのT1FOX植物に類似な表現形を示した。我々はこのような完全長cDNAアグロライブラリーを用いた遺伝子機能解析法をFox Hunting Systemと呼び、有用生物遺伝子のファンクショナルゲノミクスのための新技術として確立させるための整備を行っている。