抄録
生命活動の包括的な理解を目標とする場合、細胞内に存在する多種多様な代謝物質の量的、質的な変動を網羅的に把握することが必要と考えられ、そのためには質量分析の技術が有効である。質量分析装置から大量に産出されるメタボローム情報のハイスループット解析を行うにあたり、1)ノイズと考えられる成分の除去、2)異なったサンプルにおける保持時間の対応付け、3)異なったサンプルにおいて有意差のある成分の選択、など生物学的解釈に適切なデータ補正を行うことを目的とした解析法を確立することが強く望まれている。そこで、これらを統一的に扱うシステムを開発した。さらに、植物を中心とした代謝物質データベースと検索エンジンの開発も進めている。メタボロームプロファイリングの結果、得られたm/zの候補となる生体代謝分子を、本データベースシステムを用いて絞り込むことができる。また、その物質を含有する生物種の検索を行い、保存性との関連の検討も可能である。今回、シロイヌナズナを用いたメタボローム解析をモデルケースとして紹介する。