抄録
タバコパープルホスファターゼ(NtPAP12)の機能を明らかにするために、これを構成発現する形質転換タバコ細胞を作出し、この細胞の性質を明らかにするとともに細胞壁糖鎖の解析を行った。
ホスファターゼの構成発現は、倍加時間を短縮させて細胞増殖を促進した。その結果、細胞のサイズは小さくなり、集塊は大きくなった。プロトプラスト培養初期における糖鎖の蓄積も早くなり、特に β-グルカンの蓄積を促進した。細胞壁再生初期の糖鎖をメチル化分析により解析したところ、カロースには変化は認められなかったが、1,4-β-グルカン含量が増加していた。すなわち、パープルホスファターゼはアポプラストにおいてセルロース生合成を活性化していることが明らかとなった。
細胞壁再生初期の セルロースをセロビオハイドラーゼIとセロビオハイドラーゼIIによって分解したところ、セロビオハイドラーゼIにより分解を受けなかった。以上の結果から、細胞壁再生初期のセルロースの還元末端はフリーではなく、プライマーの結合が示唆された。パープルホスファターゼによる活性化は、1,4-β-グルカン糖鎖の還元末端または非還元末端で生じていることが推察された。