抄録
道管を構成する管状要素は、水の通路としての機能を果たすため、強固な二次壁を形成した後、細胞先端に穿孔と呼ばれる穴を開け、中空の死細胞になる。穿孔が決められた場所に開くことは道管の連続性を維持するために非常に重要であると考えられるが、その位置を決め、実際に穿孔を形成する分子機構については未知の部分が多い。そこで、我々は管状要素分化を同調的に誘導できるヒャクニチソウの培養細胞、およびシロイヌナズナを用いてこの問題に迫ることにした。
穿孔形成には局所的に細胞壁を分解する酵素の存在が必要と考えられる。そこで、ヒャクニチソウでのマイクロアレイにおいて穿孔形成が起こり始める時期に一過的に発現するポリガラクツロナーゼ(PG)に着目し、ヒャクニチソウPG遺伝子、ZePG2およびZePG3を単離した。これらはC末端に小胞体残留シグナル様の配列を持つ新規のPGであり、シロイヌナズナにおけるオルソログの2遺伝子についてもC末端にHDEL配列を有していた。これは70も存在するシロイヌナズナPG遺伝子の中でこの2遺伝子にしか見られないユニークな特徴であり、小胞体残留シグナルが細胞内輸送や局在に重要な役割をしていると予想された。そこで、これらPGの細胞内局在を明らかにするためにin vitroでタンパク質を合成し、抗体を作成した。この抗体を用いたPGタンパク質の解析結果を遺伝子発現の結果と共に報告する。