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緑藻Chlorellaはアミロースとアミロペクチンからなるデンプンを貯蔵する。培養時のCO2濃度、無機物質濃度や光条件を変化させて、C. kessleriにおけるデンプンの量と構造に対する影響を調べた。高CO2濃度(3%)で生育させた細胞を低CO2条件(0.04%、大気レベル)下におくと、ピレノイドが発達してその周りのピレノイドデンプンが増加する。その時、細胞当たりのデンプン量が増加し、アミロースのアミロペクチンに対する割合が増加した。さらに生育時のCO2濃度条件によってアミロペクチンの鎖長分布に違いが見られた。また、アンモニアの添加や暗所に移した場合にはデンプン量の減少が見られた。デンプン合成酵素の1つで主にアミロースの合成に関与していると考えられているgranule-bound starch synthase (GBSS)の量をSDS-PAGEで調べたところ、低CO2濃度では顕著な増加が見られ、その活性量も同様に増加していた。このときGBSS mRNA量も増加が見られたことから、転写レベルで発現調節が行われていることが明らかとなった。これらのことから低CO2濃度でピレノイドデンプンが拡大する際、アミロースの割合が増し、一方アンモニアの添加や暗所下では、アミロペクチンがアミロースより早く分解されることが明らかとなった。