日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナ登熟種子におけるフィチン酸合成:イノシトール一リン酸合成酵素MIPSの胚乳特異的発現
*三橋 尚登近藤 真紀中畦 悟林 誠西村 幹夫西村 いくこ三村 徹郎
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p. 231

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抄録
 種子の登熟過程において,リン酸の貯蔵形態であるフィチン酸(イノシトール六リン酸)がタンパク質蓄積型液胞PSVに蓄積することはよく知られているが、合成過程や液胞への輸送機構などは,いまだ未解明な部分が多い.フィチン酸は,まず律速段階であるイノシトール一リン酸合成酵素(MIPS)の反応によってグルコース-6-リン酸からイノシトール一リン酸に変換された後,複数のイノシトールリン酸キナーゼの働きによって合成されると考えられている.そこで鍵酵素であるMIPSの特異抗体を作成し,登熟種子の免疫電子顕微鏡観察および間接蛍光抗体観察を行った.いずれの結果においても,MIPSは,胚乳に局在し,フィチン酸の主な蓄積部位である胚にはほとんど存在しなかった.登熟種子から単離した胚のイムノブロット解析を行ったところ,貯蔵タンパク質である2Sアルブミン,12Sグロブリンは胚に局在したが,MIPSの局在は非常にわずかであった.フィチン酸合成に関与するキナーゼの1つであるイノシトール(1,4,5)三リン酸キナーゼのイムノブロット解析の結果,このキナーゼは胚に多く存在した.フィチン酸は,胚と胚乳の両方から検出された.以上の結果から,シロイヌナズナにおいては、MIPSの反応生成物の一部が胚乳から胚に輸送され,胚のイノシトールリン酸キナーゼによってフィチン酸が合成されるのではないかと考えられる.
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© 2005 日本植物生理学会
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