抄録
マメ科植物と根粒菌の共生系は相互の遺伝子発現の上に成り立っている。共生成立に関わる未知の遺伝子を探索するため、我々はミヤコグサ根粒菌Mesorhizobium loti MAFF303099株のコスミドライブラリーを用いて、新規な大域破壊株の作製と共生形質の評価を行った。M. loti MAFF303099株から約22kbpのゲノム領域(53,204-75,103)を欠失させた株DM002Sは、ミヤコグサLotus japonicus Gifu B-129に対して根粒形成不全を示した。しかし、根毛の変形、感染糸形成等の初期根粒形成過程が観察されることから、この株はフラボノイド受容能とNod Factor合成能は維持し、感染糸形成以降の感染過程に異常をきたしていると判断された。一方、DM002Sは最小培地では生育できず、アデニン要求性を示した。コスミドクローンとその派生物を用いた相補実験により、DM002Sの最小培地生育能および根粒形成能を相補する約3kbpのゲノム領域を同定した。該当ゲノム領域にはプリン生合成経路上のアデニロコハク酸リアーゼ(adenylsuccinate lyase, EC4.3.2.2)をコードするpurB遺伝子のホモログmll0079が存在しており、DM002Sのアデニン要求性および根粒形成不全の原因遺伝子であると推定される。