抄録
ランソウにはフィトクロム様遺伝子が存在し、細胞内でタンパク質として発現していることが確認されている。好熱性ランソウThermosynechococcus elongatus BP-1のフィトクロム候補は、データベース(CyanoBase)ではtll0569、tll0899、tlr0911、tlr0924、tlr1999の5遺伝子があげられている。しかし、この候補の中に高等植物フィトクロムのようにフィトクロムドメインを持つものはなかった。
我々は上記5個の候補の他に、GAFドメインを持つフィトクロム様タンパクをコードするtlr1215遺伝子にも着目し、破壊株を作製した。走光性の作用スペクトルを岡崎大型スペクトログラフを用いて測定したところ、この破壊株では赤色光域特異的に走光性の活性が減少していた。またこの遺伝子を大腸菌で発現させ、色素団ビリベルジンを加えてビリン色素の結合性をZinc-stain法で検討した。その結果、Tlr1215タンパクにはビリン色素が結合することが明らかになった。さらに、ランソウフィトクロムの色素団と考えられているフィコシアノビリンとの結合実験を試みたので報告する。
また他の光受容体候補遺伝子や、その破壊株の走光性の観察結果も交えて、ランソウ細胞内での機能について報告する予定である。