抄録
紅色細菌のAppAは光合成遺伝子特異的な抗転写抑制因子として機能する新規の青色光受容体である。我々はAppAの光照射に伴うFADとタンパク質の構造変化を各々独立に観測することを目的に、FADと変性アポタンパク質よりの機能AppAの再構成系を確立した。この系を用い13C同位体ラベルしたアポタンパク質と非ラベルFADより再構成したAppA(12C FAD/13Cアポタンパク質)について、光励起フーリエ変換赤外差スペクトル(FTIR)を測定し、13Cラベル及び非ラベルAppAのスペクトルと比較した。
非ラベルAppAのスペクトルでは1709(-)/1695(+)cm-1と1632(+)/1619(-)cm-1の2対の顕著なバンドが観測されたが、FAD骨格構造の変化に対応するバンドは非常に小さかった。13Cラベル化により各バンドの位置は約40 cm-1低波数シフトしたが、スペクトルの形に大きな変化は見られなかった。しかし12C FAD/13Cアポタンパク質再構成標品では、少なくとも4本のバンドが観測された。分離された4本のバンドは、FADのイソアロキサジン環のC(4)=O伸縮振動バンド(1707(-)/1684(+)cm-1)を除き全てポリペプチド鎖の構造変化に由来するものであることがわかった。C(4)=Oバンドの波数変化は光照射に伴いC(4)=Oに強い水素結合が生じることを示しており、フラビンC(4)=Oへの強い水素結合の形成に伴いタンパク質主鎖が大きく変化していることがわかった。