抄録
BLUFドメインは、紅色光合成細菌、シアノバクテリア、鞭毛藻類などの様々な生物種のゲノム上に存在するFAD結合青色光センサードメインである。好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus elongatus BP-1は、全長がほぼBLUFドメインのみからなるTll0078を持つ。Tll0078は室温で光照射を行うと、FADの吸収スペクトルが約10 nm長波長シフトする光反応サイクルを示す。BLUFドメインの反応過程を調べるために、大腸菌内で発現されたTll0078の蛍光寿命・過渡吸収変化の測定を行った。Tll0078の蛍光は、室温で120 ps (振幅比95 %), 710 ps (4 %), 4.56 ns (1 %)の三成分の減衰を示した。また、ナノ秒過渡吸収変化は、室温では励起後数十ns以下で、10 nmシフトした状態が形成されることを示した。これらの結果は非常に早い初期光反応過程が存在することを示す。Tll0078を暗条件下で極低温10 Kまで冷却し光照射を行うと、FADの吸収スペクトルが約5 nm長波長シフトした中間体(I-form)がトラップされた。このI-formは、温度上昇で長波長側へ10 nmシフトした終状態(F-form)へと変化した。これらの中間体と蛍光寿命を比較することで、タンパク質の構造変化を議論する。