日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナのアスコルビン酸合成欠損変異体vtc1における酸化的ストレス障害発生メカニズム
*吉田 征司玉置 雅紀中嶋 信美青野 光子久保 明弘鎌田 博佐治 光
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p. 322

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抄録
 植物は環境ストレスに晒されており、その多くが植物内で活性酸素(ROS)を生じさせることから、酸化的ストレスに対する植物の応答機構の研究が注目されている。植物はROSを除去するためにアスコルビン酸(ASA)等の抗酸化物質を合成している。実際ASA合成能が低下したvtc1変異体ではASA含量の減少によりROSが除去できず、葉に可視障害が現れると考えられていた。しかし、最近病原菌を感染させたvtc1ではグリコシルサリチル酸量が増加し、これにより細胞死が引き起こされる可能性が示唆された。そこで本研究ではストレス源としてオゾンを用い、ASAと植物ホルモンとの関係について解析を行った。オゾン暴露時のvtc1におけるサリチル酸(SA)量を計測した結果、vtc1では野生型のCol-0よりも多くのSAが蓄積し、PR1の発現上昇も顕著であった。さらに、vtc1ではエチレン発生量、PR4の発現量も増加していた。以上の結果、vtc1の可視障害はASA量の低下に伴うROS除去能の低下だけではなく、SA、エチレンの過剰な蓄積が関与していることが示唆された。現在vtc1の可視障害の発生に対するSAやエチレンの関与を確かめるため、vtc1とSA合成欠損変異体sid2、エチレンシグナル欠損変異体ein2との二重変異体を作製し、これらのオゾン感受性を検証している。
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© 2005 日本植物生理学会
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