抄録
我々は、ADPglucoseをG1PとAMPに分解する酵素nucleotide pyrophosphatase (NPP1) について研究を行ってきた。昨年度年会においてNPP1の精製及びcDNAクローニングについて、そしてNPP1がプラスチド局在を示すことからデンプン生合成制御に関わる新規因子となり得ることを報告した。本年会ではさらに本酵素の植物体内での生理的役割を明らかにするために、本酵素を過剰発現するトランスジェニックイネを作製し解析を行ったのでこれを報告する。本酵素を過剰発現する植物体内でのデンプン、糖含量を測定したところ明らかなデンプン量の減少と遊離糖の増加が確認された。さらにデンプン代謝に関わる酵素群の活性を調べると一部の酵素において著しい活性の上昇が確認された。これらの結果はNPP1がデンプン合成制御に関わることをさらに支持する結果であると考えられた。また興味深いことに、本酵素を過剰発現することにより発芽後の伸長生長期における顕著な生長促進、また出穂時における草丈の伸長促進が確認された。これらのことから本酵素の生理的役割について議論する。