抄録
我々はイネにおけるα-アミラーゼ多型発現の生理的役割に関する研究を進めている。イネα-アミラーゼには多くのアイソフォームか存在し、発芽種子及び胚由来のカルスから少なくとも20種類以上のアイソフォームが同定されている。α-アミラーゼアイソフォームの一つであるα-アミラーゼI-1 (RAmy1A) は、発芽イネ種子の胚盤上皮細胞およびアリューロン層において活発に生合成・分泌されるN-結合型糖鎖を有する糖タンパク質である。イネ細胞を抗α-アミラーゼI-1抗体で免疫染色し電子顕微鏡下で観察したところ、アミロプラスト及びクロロプラストに存在するものが見いだされた。さらに、α-アミラーゼI-1 の全長cDNAとGFP遺伝子を融合したコンストラクトを作製し、プラスチドマーカーとタマネギ表皮細胞に同時導入したところ、2つのレポータータンパクの局在は一致していた。またα-アミラーゼI-1のC末端から59残基切除したものでもプラスチドへの局在は見られたが、シグナル配列部分のみをつなげたものでは、その局在は見られなかった。その他のα-アミラーゼアイソフォームについても同様に実験を行ったところ、プラスチドへの局在が見られないものもあった。これらの結果は、これまで知られていないアミロプラストへの細胞内輸送・ターゲティング機構が存在し、多型発現するα-アミラーゼの機能の違いが存在することが示唆された。