抄録
緑藻クラミドモナスは、CO2欠乏条件下において炭酸同化を効率良く行うために無機炭素濃縮機構(carbon concentrating mechanism; CCM)を発現し、細胞内の無機炭素濃度を積極的に上昇させることが知られている。クラミドモナスのCCMの発現誘導にはCCM1タンパクが必須であることが明らかとなっているが、CO2の検知やCCMの発現制御については不明な点が多く残されている。CO2への応答機構を解析するには、細胞のCO2の吸収を調べる必要がある。そこで本研究では、CO2吸収のより迅速な解析法としてOpen gas exchange systemを用いてクラミドモナスの光依存的なCO2取り込み活性を測定した。50 ppm(1.46 μmol/l)のCO2ガスを通気しながら白色光(4,000 μmol photons/m2/s)を照射すると、5%、0.04 % CO2条件で生育させた野生株はそれぞれ8.8、53.4 μmol CO2/mg Chl・hのCO2取り込み活性を示した。一方Ccm1欠損株は、いずれの条件下で生育させても8.8 μmol CO2/mg Chl・hの活性しか示さなかった。このことから、この測定法によってCCMの誘導状態は容易に評価できることが示された。その他のCO2応答性変異株の解析結果および光合成電子伝達阻害剤の影響も合わせて報告する。