抄録
緑藻クラミドモナスやラン藻では、光合成に必要な無機炭素(CO2, HCO3-など)が不足すると、細胞内の無機炭素濃度を能動的に上昇させる無機炭素濃縮機構(CCM)が誘導される。クラミドモナスにおいては、CCMの発現誘導に関わる調節因子CCM1 (CIA5)が知られている。本研究ではCCM1タンパク質の機能部位を調べるため、まず大腸菌BL21(DE3)pLysSを宿主としたpET発現系でHis-CCM1タンパク質を発現・精製し、抗CCM1抗体を作成した。SDS-PAGEを用いてクラミドモナスの可溶性タンパク質のウェスタン解析を行なったところ、約95kDaのタンパク質が検出された。CCM1タンパク質の推定分子量は70,073であるので、in vivoで何らかの修飾を受けていることが示唆された。また、CCM1タンパク質はCO2濃度に関わりなく構成的に発現していた。相同性検索の結果、亜鉛フィンガードメインに含まれる5つのCys残基がCCM1で保存されていた。さらに、CCM1のAsp-60残基がCCM1の機能に必須であるかどうかを検証するため、これをHis、Cys、Valにそれぞれ置換した株を作出したところ、いずれの形質転換株もCO2欠乏条件下で野生型と同様に生育したので、CCM1の機能にAsp-60は必須でないことが示された。