抄録
秋播きコムギは、高度な低温適応(cold acclimation)機構を有し、一般に10℃以下の低温環境に持続的にさらされることにより、耐凍性を獲得する。そこで、低温適応によって再構築された遺伝子発現パターンを網羅的に明らかとするために、マイクロアレイによるトランスクリプトーム解析を行った。
高度耐凍性品種.Valuevskayaを供試材料とし、低温・短日処理(2/0.5℃, 400μmolm-2s-1, 10h日長)を7週間行い、低温適応期間中に展開した第5葉よりtotal RNAを抽出した。コントロールとして、常温で生育させた同一ステージの葉を用いた。22kコムギオリゴマイクロアレイ(21,939プローブ)を用い、Cy3及び Cy5ラベルによる2色法によりハイブリダイズを行った。解析対象とした15,679遺伝子中、発現量の比が2倍以上(P<0.01)と認められたものは2,435遺伝子であり、全体の15.5%の遺伝子発現が長期の低温適応の結果変動していることが明らかとなった。また、低温適応性が極めて低い春播き品種.ハルユタカについても同様の処理を行い、比較解析を行った結果、17,503遺伝子中1,571遺伝子(9.0%)が両品種間で差異を示した。その中に占める低温変動遺伝子数は、900(57.3%)であり、高度耐凍性の獲得・維持に関与する遺伝子発現が含まれると考えられた。