抄録
植物の根は、水分、重力、光、接触、温度などの化学的物理的環境因子を感知し、屈性を示すことが知られている。近年、エンドウマメ(Pisum sativum)を用いて、その根が高濃度の酸素に向かう、酸素屈性を示すことが明らかにされた。そこで筆者らは、低酸素に対する植物の分子応答機構を明らかにする目的で、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を用いた低酸素応答に対する簡便なスクリーニング法を開発したので報告する。
方法としては、シロイヌナズナ種子を低温処理後、GM培地に播種し、22℃連続光下で6日間生育させた幼植物を、酸素除去剤で低酸素状態に2日間置き、その表現型の変化を顕微鏡観察により調査した。
その結果、シロイヌナズナの根端付近で根毛が密集して形成され、さらに根毛伸長の増大が観察された。また、酸素濃度は酸素除去剤を入れてから1時間前後でおよそ2%に低下し、2日間持アすることがわかった。さらに、低酸素で誘導される根毛形成と、エチレン前駆体であるACCやACC合成酵素の阻害剤であるAVGを添加した時の根毛形成との相異を比較している。