抄録
レッドリーフレタスは、葉の先端から中央部分にかけて赤褐色の着色が見られる作物であるが、水耕で栽培するとアントシアニン色素が減少し、葉の着色が不足して商品価値の低下を招く場合がある。着色改善方法を検討したところ、青色光もしくは紫外線(UV-B)の夜間補光、水耕培養液の冷却、肥料養分のリン制限処理などで着色が促進されたが、これらのうち生長を損なうことなく着色促進を図れるのは夜間補光のみであった。アントシアニンの蓄積が促進される現象が認められるのは未成熟葉だけであり、成熟葉では十分な着色を得られなかった。そこで、アントシアニンの生合成を担う遺伝子群をクローニングして発現解析を行ったところ、未成熟葉でのみleucoanthocyanidin dioxygenase遺伝子(LDOX)の発現量が増加していた。一方、水耕培養液の冷却や肥料養分のリン制限処理では、LDOXの発現量は低レベルであった。以上のことから、夜間補光によるアントシアニンの蓄積反応と培養液冷却やリン制限処理による反応は異なったメカニズムによって調節されていることが示唆された。