日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
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鉄欠乏誘導性オオムギ根タンパク質の細胞内局在
*長坂 征治高橋 美智子中西 啓仁森 敏西澤 直子
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p. 415

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抄録
オオムギは、鉄欠乏条件下で多量のムギネ酸類を分泌し、その分泌パターンが日周性を示すことが知られている。オオムギのムギネ酸類分泌は、夜明けと共に開始され最大に達した後、数時間の間で減少し、再び基底状態にもどる。鉄欠乏のオオムギの根では、ムギネ酸顆粒と呼ばれる細胞内小胞の数の増加が認められる。さらに、夜明け前には、この顆粒が細胞の表層近くに密集していることから、この顆粒のムギネ酸分泌への関与が示唆されている。本研究では、鉄欠乏誘導性オオムギ根タンパク質の抗体を用いて、これらのタンパク質の組織局在、細胞内局在を解析し、ムギネ酸類分泌機構との関係を検討した。
 光顕免疫染色法によって、ムギネ酸類の前駆体であるニコチアナミンの合成酵素(NAS)、ムギネ酸類の水酸化反応を触媒するIDS3タンパク質が根の表層に局在していることが示された。さらに、免疫電顕法を用いてこれらの酵素の細胞内での局在を調べた。NASは、ムギネ酸顆粒の膜上に局在し、ニコチアナミンアミノ基転移酵素もNASと同様にムギネ酸顆粒に局在していた。一方、IDS3は、ムギネ酸顆粒の近傍の細胞質に存在していた。これらの結果から、ムギネ酸の合成から、根圏への分泌に至る過程のなかで、ムギネ酸顆粒が、ムギネ酸合成の場として、また、細胞の表層近くへのムギネ酸の輸送小胞として機能している可能性が示唆された。
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© 2005 日本植物生理学会
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