抄録
温度は種子の発芽を決定する重要な環境要因である。高温によるシロイヌナズナ種子発芽の阻害に関わる遺伝因子を網羅的に探索するため、アジレント社の22kオリゴマイクロアレイを用い、発芽の高温阻害を受ける34℃および高い発芽率を示す22℃で吸水した種子における遺伝子発現の様子を経時的に解析・比較した。発現変化は乾燥種子のレベルからの相対値で表し、有意に2倍以上の値を示した9,138遺伝子を解析の対象とした。22℃では吸水時間の経過とともに発現が変化した遺伝子の数および変化の幅が増大した。34℃では、22℃と比較して発現変化した遺伝子が少数となり、変化の幅も狭いことを明らかにした。遺伝子発現パターンの類似性を比較したところ、1)22℃6時間吸水、2)34℃6時間吸水、3)22℃12時間・24時間・36時間吸水、および、4)34℃12時間・24時間・36時間吸水の4つのクラスタに分類された。22℃で吸水させた種子では、24時間まで可視的な発芽が認められず、36時間以降で可視的な発芽(生理的な発芽の完了)が観察された。したがって、温度は吸水6時間までに遺伝子発現に影響を与えており、12時間以降では発芽の誘導あるいは阻害に関わる遺伝子の発現を誘導していると考えられた。