抄録
我々は昨年の植物生理学会において、次世代型アクチベーションタギング法であるFox Hunting System (Full-length cDNA over-expresser gene-hunting system) を開発したことを報告した。本研究では、このFOX Hunting Systemを利用して、ストレス応答性を示すシロイヌナズナ転写因子の機能解析を行った。
マイクロアレイ解析によって同定した43個のストレス誘導性転写因子の完全長cDNAを含むバイナリーベクターライブラリーをアグロバクテリウムを介して植物に導入した。得られた224ラインの独立した形質転換植物について、導入遺伝子と表現型との比較を行った結果、コントロールとして加えたDREB1A導入ラインは8ライン得られ、そのうち5ラインがDREB1A過剰発現体に特徴的なわい性の表現型を示した。また、Zinc Fingerドメインを持つ遺伝子を導入したラインにおいて、ロゼット葉の下偏成長、花芽および鞘が下を向くという形態異常が観察された。この変異体では、系頂分裂組織で機能する形態形成関連遺伝子の発現パターンが変化していたことから、原因遺伝子であるZinc Finger遺伝子が、形態形成および乾燥ストレス応答において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
以上のことから、Fox Hunting System は、類似した発現プロファイルを示す転写因子のような、限られた遺伝子集団における遺伝子の機能探索においても、大変有用な方法であることが示された。