抄録
ヨシ(Phragmites communis)は耐塩性植物であり、塩類集積土壌においても体内Na濃度を低く保つことができる。これは根から吸収されたNaを茎基部(根と地上部の境界)で再び根に送り返す機構を持つためであるとされている。そこで本研究ではイネ(Oryza sativa L.cv.Nipponbare)を対照植物とし、根表面から吸収されたイオンが根を移行した量、根から吸収されたイオンが茎基部を移行した量を測定し、比較することで茎基部の機能を定量的に評価した。ヨシはイネよりも根でNaを排除する能力は低かったが、ヨシ茎基部はNaを移行させにくくNaCl処理でのNaの茎基部移行割合(茎基部通過後のイオンの量/茎基部通過前のイオンの量)はイネで52.8%に対してヨシでは4.3%と低かった。またヨシ茎基部のイオンを移行させにくい機能には選択性があり、KCl処理のKおよびNa2SO4処理のNaではヨシとイネで茎基部移行割合は大差ないことがわかった。さらにヨシ、イネともに茎基部に高温の熱風を3秒間吹きつけることでイオンを移行させにくい機能が失われたことにより、この機能には何らかのトランスポーターやチャネルが関与していることが示唆された。例えば維管束近辺の細胞でNaトランスポーターが過剰発現し、道管から上昇していくNaを回収し師管へ送り返していることが考えられる。