抄録
花茎と胚軸の重力屈性および形態に異常をもつシロイヌナズナzigzag(zig)変異体の原因遺伝子は、トランスゴルジ網から液胞へ向かう小胞輸送に関与するSNARE VTI11をコードする。高等植物における小胞輸送の分子ネットワークおよび小胞輸送の生理機能(重力応答や形態形成)へ関与を遺伝学的に解析するために、我々はzigのサプレッサー変異体を多数得ている。その一つであるzig suppressor 1(zip1)はZIG/VTI11のホモログVTI12に生じた優性変異であり、zig変異体の重力屈性および形態における異常を野生株レベルまで回復させる。一方、zip2はzig変異体の重力屈性および形態の異常を部分的に回復させる劣性変異である。ZIP2のマッピングを行ったところ、zip1とは異なる第1染色体北に強い連鎖が見られた。さらに別のサプレッサー変異体SC2-1は zip1やzip2に比べて重力屈性の回復が弱く、本葉の形態もzigに近いが、花茎のジグザグ形態をかなり抑圧する劣性変異である。SC2-1の原因遺伝子のマッピングを行ったところ、zip1およびzip2とは異なる第1染色体南に強い連鎖が確認された。zigの表現型を重力屈性および形態の双方で抑圧することから、zip2やSC2-1の原因遺伝子も液胞への小胞輸送関連因子であると期待される。