抄録
(目的)
イネ種子胚乳組織は、次代の栄養源となる貯蔵タンパク質を集積する2種類のプロテインボディ(PB)を含む。プロラミンは同心円上の構造を持つ粗面小胞体由来(rER)のPB-Iに集積し、グルテリンとグロブリンは高い電子密度を示す液胞由来のPB-IIに集積することが明らかにされている。本研究では貯蔵タンパク質の輸送経路を明らかにするために、登熟中期の胚乳組織の電子顕微鏡観察を行った。
(方法と結果)
イネ胚乳組織中にrER由来の新規ベシクルを発見した。この新規ベシクルはrER由来のPB-Iとも、ゴルジ体由来のデンスベシクルとも異なる構造をしていた。新規ベシクルの中心部はPB-IIと同じ電子密度を示し、その周囲には電子密度の低い層があり、外周部はポリゾームに覆われていた。免疫電子顕微鏡観察の結果、新規ベシクルは中心部にグルテリンとグロブリンを含むことが明らかになった。また、ER内在性分子シャペロンであるBiPは、新規ベシクルとPB-IIの両者に存在していた。以上の結果より、新規ベシクルはイネ胚乳組織においてrERから生じ、グルテリンとグロブリンのPB-IIへの輸送を仲介することが示唆された。