抄録
オートファジー(自食作用)は、栄養飢餓等に伴って細胞質成分を液胞に輸送して分解する細胞内分解システムである。我々は、酵母においてAtg8のC末端がAtg4プロテアーゼにより切断された後、ユビキチン化に類似した反応により脂質修飾されること、そして、このAtg8脂質修飾反応がオートファジー進行を担う分子機構の鍵になることを見いだしている。
シロイヌナズナにはATG8, ATG4オーソログが存在し、その詳細が明らかになっていない植物のオートファジーにおいても同様の役割を担っていることが予想される。酵母Atg8はオートファジーの進行に伴い液胞内に移行することが知られている。そこで、GFP-ATG8融合タンパク質を発現させた形質転換植物を作製し、その挙動を観察した。GFP-ATG8は細胞質中のリング状構造に局在し、窒素飢餓条件下で液胞内への移行が観察された。また、2種のATG4のT-DNA挿入株をそれぞれ取得し、その二重変異株におけるGFP-ATG8の挙動を解析したところ、窒素飢餓条件下でも液胞内へ移行しなかった。このことは、ATG4二重変異株はオートファジー不能であることを示している。オートファジー能を欠損した二重変異株の表現型解析をしたところ、老化が早まり、窒素飢餓条件で根の伸長が阻害されていた。以上の結果から、高等植物においてオートファジーが果たす生理的役割について考察する。