日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第46回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

AtRAD51遺伝子のDNA傷害応答性発現制御を利用したDNA鎖切断誘導刺激の特異的検出法
*前田 智秀渡壁 百合子徐 承姫高瀬 尚文平塚 和之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 542

詳細
抄録
シロイヌナズナAtRAD51遺伝子はγ線やX線などにより生じたDNA鎖切断により遺伝子発現が上昇することが示されている。その遺伝子発現制御領域を利用して植物細胞内に伝達されるDNA鎖切断シグナルを可視化し非破壊的に連続観察可能な系の開発を試みた。AtRAD51プロモーターの下流にホタル由来改変ルシフェラーゼ遺伝子(Fluc+: modified firefly luciferase) を連結した融合遺伝子 (AtRAD51::Fluc+) を作製し、アグロバクテリウム法を用いて、タバコ培養細胞、タバコ植物体、シロイヌナズナ植物体に導入した。これらの形質転換体を用いてDNA傷害応答実験を行った。AtRAD51::Fluc+形質転換体にDNA二重鎖切断誘導剤であるブレオマイシンを様々な濃度で添加したところ、ブレオマイシン濃度依存的なレポーター遺伝子の誘導が観察された。また、AtRAD51::Fluc+形質転換タバコ葉に対して、各種刺激処理を行ったところ、DNA鎖切断を引き起こす刺激であるUV-Bあるいはブレオマイシン処理特異的なAtRAD51の発現誘導が観察された。一方、重金属や植物ホルモン、病害応答遺伝子誘導剤などの処理においては、植物組織への生体異物反応が観察されたもののAtRAD51の発現誘導は観察されなかった。これらの結果から、AtRAD51の発現誘導は形質転換植物葉においてDNA鎖切断刺激に特異的であり、そのDNA傷害応答制御は細胞自律的であることが示唆された。
著者関連情報
© 2005 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top